歌人に会える百人一首
紫式部
意味
久しぶりにめぐり会って、それが誰かわからないうちにあなたは雲に隠れる夜半の月のように帰ってしまった。
解説
この歌は、幼い頃の友人と久しぶりに再会したものの、相手はすぐに帰ってしまい、十分に語り合うこともできなかった寂しさを詠んだ歌です。夜半の月が雲に隠れてしまう様子に友人の姿を重ね、再会の喜びと別れの名残惜しさを優雅に表現しています。短い出会いの一瞬を美しい情景へと変えるところに、鋭い観察力と豊かな想像力が感じられます。
作者の紫式部は、幼い頃から学問に優れ、人の心の機微を深く見つめる才能を持っていました。『源氏物語』でも人と人とのすれ違いや儚い縁を繊細に描いていますが、この歌にもその感性が表れています。ただ再会を惜しむだけでなく、その一瞬の心の動きを月の姿に託して表現するあたりに、物事の奥にある感情を見逃さない紫式部らしい知性と情感がうかがえます。
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