時雨の百人一首

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百人一首の全100首を一覧で紹介します。上の句・下の句・歌人名を確認でき、和歌をクリックすると現代語訳が表示されます。歌番号からは、それぞれの和歌の詳しい解説をご覧いただけます。

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百人一首 一覧(歌番号・和歌・作者)
番号和歌・作者
1秋あきの田たの かりほの庵いおの 苫とまをあらみ
我わが衣手ころもでは 露つゆにぬれつつ▼ 現代語訳
あきのたの
かりほのいほの
とまをあらみ
わがころもでは
つゆにぬれつつ
あきのたのかりおのいおのとまをあらみわがころもではつゆにぬれつつ秋の田のかりほの庵の苫をあらみ我が衣手は露にぬれつつ 天智天皇
2春はる過すぎて 夏なつ来きにけらし 白妙しろたえの
衣ころもほすてふちょう 天あまの香具山かぐやま▼ 現代語訳
はるすぎて
なつきにけらし
しろたへの
ころもほすてふ
あまのかぐやま
はるすぎてなつきにけらししろたえのころもほすちょうあまのかぐやま春過ぎて夏来にけらし白妙の衣ほすてふ天の香具山 持統天皇
3あしびきの 山鳥やまどりの尾おの しだり尾おの
ながながし夜よを ひとりかも寝ねむん▼ 現代語訳
あしびきの
やまどりのをの
しだりをの
ながながしよを
ひとりかもねむ
あしびきのやまどりのおのしだりおのながながしよをひとりかもねんあしびきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む 柿本人麻呂
4田子たごの浦うらに うちいでてみれば 白妙しろたえの
富士ふじの高嶺たかねに 雪ゆきは降ふりつつ▼ 現代語訳
たごのうらに
うちいでてみれば
しろたへの
ふじのたかねに
ゆきはふりつつ
たごのうらにうちいでてみればしろたえのふじのたかねにゆきはふりつつ田子の浦にうちいでてみれば白妙の富士の高嶺に雪は降りつつ 山部赤人
5奥山おくやまに 紅葉もみじ踏ふみ分わけ 鳴なく鹿しかの
声こえ聞きく時ときぞ 秋あきはかなしき▼ 現代語訳
おくやまに
もみぢふみわけ
なくしかの
こゑきくときぞ
あきはかなしき
おくやまにもみじふみわけなくしかのこえきくときぞあきはかなしき奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋はかなしき 猿丸太夫
6かささぎの 渡わたせる橋はしに おく霜しもの
白しろきをみれば 夜よぞふけにける▼ 現代語訳
かささぎの
わたせるはしに
おくしもの
しろきをみれば
よぞふけにける
かささぎのわたせるはしにおくしものしろきをみればよぞふけにけるかささぎの渡せる橋におく霜の白きをみれば夜ぞふけにける 中納言家持
7天あまの原はら ふりさけみれば 春日かすがなる
三笠みかさの山やまに 出いでし月つきかも▼ 現代語訳
あまのはら
ふりさけみれば
かすがなる
みかさのやまに
いでしつきかも
あまのはらふりさけみればかすがなるみかさのやまにいでしつきかも天の原ふりさけみれば春日なる三笠の山に出でし月かも 安倍仲麻呂
8わが庵いおは 都みやこの辰巳たつみ しかぞすむ
世よをうぢじ山やまと 人ひとはいふうなり▼ 現代語訳
わがいほは
みやこのたつみ
しかぞすむ
よをうぢやまと
ひとはいふなり
わがいおはみやこのたつみしかぞすむよをうじやまとひとはいふなりわが庵は都の辰巳しかぞすむ世をうぢ山と人はいふなり 喜撰法師
9花はなの色いろは うつりにけりな いたづずらに
わが身みよにふる ながめせしまに▼ 現代語訳
はなのいろは
うつりにけりな
いたづらに
わがみよにふる
ながめせしまに
はなのいろはうつりにけりないたずらにわがみよにふるながめせしまに花の色はうつりにけりないたづらにわが身よにふるながめせしまに 小野小町
10これやこの 行ゆくも帰かえるも わかれては
しるもしらぬも 逢坂おうさかの関せき▼ 現代語訳
これやこの
ゆくもかへるも
わかれては
しるもしらぬも
あふさかのせき
これやこのゆくもかえるもわかれてはしるもしらぬもおうさかのせきこれやこの行くも帰るもわかれてはしるもしらぬも逢坂の関 蝉丸
11わたの原はら 八十島やそしまかけて 漕こぎ出いでぬと
人ひとにはつげよ あまのつり舟ぶね▼ 現代語訳
わたのはら
やそしまかけて
こぎいでぬと
ひとにはつげよ
あまのつりぶね
わたのはらやそしまかけてこぎいでぬとひとにはつげよあまのつりぶねわたの原八十島かけて漕ぎ出でぬと人にはつげよあまのつり舟 参議篁
12天あまつ風かぜ 雲くものかよひい路じ 吹ふきとぢじよ
をとめの姿すがた しばしとどめむん▼ 現代語訳
あまつかぜ
くものかよひぢ
ふきとぢよ
をとめのすがた
しばしとどめむ
あまつかぜくものかよいじふきとじよおとめのすがたしばしとどめん天つ風雲のかよひ路吹きとぢよをとめの姿しばしとどめむ 僧正遍昭
13筑波嶺つくばねの 峰みねより落おつる みなの川がわ
こひぞつもりて 淵ふちとなりぬる▼ 現代語訳
つくばねの
みねよりおつる
みなのがは
こひぞつもりて
ふちとなりぬる
つくばねのみねよりおつるみなのがわこいぞつもりてふちとなりぬる筑波嶺の峰より落つるみなの川こひぞつもりて淵となりぬる 陽成院
14陸奥みちのくの しのぶもぢじずり 誰たれゆゑえに
乱みだれそめにし 我われならなくに▼ 現代語訳
みちのくの
しのぶもぢずり
たれゆゑに
みだれそめにし
われならなくに
みちのくのしのぶもじずりたれゆえにみだれそめにしわれならなくに陸奥のしのぶもぢずり誰ゆゑに乱れそめにし我ならなくに 河原左大臣
15君きみがため 春はるの野のに出いでて 若菜わかなつむ
わが衣手ころもでに 雪ゆきは降ふりつつ▼ 現代語訳
きみがため
はるののにいでて
わかなつむ
わがころもでに
ゆきはふりつつ
きみがためはるののにいでてわかなつむわがころもでにゆきはふりつつ君がため春の野に出でて若菜つむわが衣手に雪は降りつつ 光孝天皇
16立たち別わかれ いなばの山やまの 峰みねに生おふうる
まつとし聞きかば 今いま帰かえりこむん▼ 現代語訳
たちわかれ
いなばのやまの
みねにおふる
まつとしきかば
いまかへりこむ
たちわかれいなばのやまのみねにおうるまつとしきかばいまかえりこん立ち別れいなばの山の峰に生ふるまつとし聞かば今帰りこむ 中納言行平
17ちはやぶる 神代かみよもきかず 竜田川たつたがわ
から紅くれないに 水みずくくるとは▼ 現代語訳
ちはやぶる
かみよもきかず
たつたがは
からくれなゐに
みづくくるとは
ちはやぶるかみよもきかずたつたがわからくれないにみずくくるとはちはやぶる神代もきかず竜田川から紅に水くくるとは 在原業平朝臣
18住すみの江えの 岸きしによる波なみ よるさへえや
夢ゆめのかよひ路じ 人目ひとめよくらむん▼ 現代語訳
すみのえの
きしによるなみ
よるさへや
ゆめのかよひぢ
ひとめよくらむ
すみのえのきしによるなみよるさえやゆめのかよいじひとめよくらん住の江の岸による波よるさへや夢のかよひ路人目よくらむ 藤原敏行朝臣
19難波潟なにわがた みじかき葦あしの ふしのまも
逢あはわでこの世よを 過すぐしてよとや▼ 現代語訳
なにはがた
みじかきあしの
ふしのまも
あはでこのよを
すぐしてよとや
なにわがたみじかきあしのふしのまもあわでこのよをすぐしてよとや難波潟みじかき葦のふしのまも逢はでこの世を過ぐしてよとや 伊勢
20わびぬれば いまはたおなじ 難波なにわなる
みをつくしても 逢あはわむんとぞ思おもふう▼ 現代語訳
わびぬれば
いまはたおなじ
なにはなる
みをつくしても
あはむとぞおもふ
わびぬればいまはたおなじなにわなるみをつくしてもあわんとぞおもうわびぬればいまはたおなじ難波なるみをつくしても逢はむとぞ思ふ 元良親王
21今いまこむんと いひいしばかりに 長月ながつきの
有明ありあけの月つきを 待まち出いでつるかな▼ 現代語訳
いまこむと
いひしばかりに
ながつきの
ありあけのつきを
まちいでつるかな
いまこんといいしばかりにながつきのありあけのつきをまちいでつるかな今こむといひしばかりに長月の有明の月を待ち出でつるかな 素性法師
22吹ふくからに 秋あきの草木くさきの しをるれば
むべ山風やまかぜを 嵐あらしといふうらむん▼ 現代語訳
ふくからに
あきのくさきの
しをるれば
むべやまかぜを
あらしといふらむ
ふくからにあきのくさきのしおるればむべやまかぜをあらしというらん吹くからに秋の草木のしをるればむべ山風を嵐といふらむ 文屋康秀
23月つきみれば ちぢにものこそ 悲かなしけれ
わが身み一ひとつの 秋あきにはあらねど▼ 現代語訳
つきみれば
ちぢにものこそ
かなしけれ
わがみひとつの
あきにはあらねど
つきみればちぢにものこそかなしけれわがみひとつのあきにはあらねど月みればちぢにものこそ悲しけれわが身一つの秋にはあらねど 大江千里
24このたびは 幣ぬさもとりあへえず 手向山たむけやま
もみぢのにしき 神かみのまにまに▼ 現代語訳
このたびは
ぬさもとりあへず
たむけやま
もみぢのにしき
かみのまにまに
このたびはぬさもとりあえずたむけやまもみじのにしきかみのまにまにこのたびは幣もとりあへず手向山もみぢのにしき神のまにまに 菅家
25名なにし負おはば 逢坂山おうさかやまの さねかづずら
人ひとにしられで くるよしもがな▼ 現代語訳
なにしおはば
あふさかやまの
さねかづら
ひとにしられで
くるよしもがな
なにしおわばおうさかやまのさねかずらひとにしられでくるよしもがな名にし負はば逢坂山のさねかづら人にしられでくるよしもがな 三条右大臣
26小倉山おぐらやま 峰みねのもみぢじ葉は 心こころあらば
今いまひとたびの みゆき待またなむん▼ 現代語訳
をぐらやま
みねのもみぢば
こころあらば
いまひとたびの
みゆきまたなむ
おぐらやまみねのもみじばこころあらばいまひとたびのみゆきまたなむ小倉山峰のもみぢ葉心あらば今ひとたびのみゆき待たなむ 貞信公
27みかの原はら わきて流ながるる いづずみ川がわ
いつ見みきとてか 恋こいしかるらむん▼ 現代語訳
みかのはら
わきてながるる
いづみがは
いつみきとてか
こひしかるらむ
みかのはらわきてながるるいずみがわいつみきとてかこいしかるらんみかの原わきて流るるいづみ川いつ見きとてか恋しかるらむ 中納言兼輔
28山里やまざとは 冬ふゆぞさびしさ まさりける
人目ひとめも草くさも かれぬと思おもへえば▼ 現代語訳
やまざとは
ふゆぞさびしさ
まさりける
ひとめもくさも
かれぬとおもへば
やまざとはふゆぞさびしさまさりけるひとめもくさもかれぬとおもえば山里は冬ぞさびしさまさりける人目も草もかれぬと思へば 源宗于朝臣
29心当こころあてに 折おらばや折おらむん 初霜はつしもの
おきまどはわせる 白菊しらぎくの花はな▼ 現代語訳
こころあてに
をらばやをらむ
はつしもの
おきまどはせる
しらぎくのはな
こころあてにおらばやおらんはつしものおきまどわせるしらぎくのはな心当てに折らばや折らむ初霜のおきまどはせる白菊の花 凡河内躬恒
30有明ありあけの つれなく見みえし 別わかれより
あかつきばかり 憂うきものはなし▼ 現代語訳
ありあけの
つれなくみえし
わかれより
あかつきばかり
うきものはなし
ありあけのつれなくみえしわかれよりあかつきばかりうきものはなし有明のつれなく見えし別れよりあかつきばかり憂きものはなし 壬生忠岑
31朝あさぼらけ 有明ありあけの月つきと 見みるまでに
吉野よしのの里さとに 降ふれる白雪しらゆき▼ 現代語訳
あさぼらけ
ありあけのつきと
みるまでに
よしののさとに
ふれるしらゆき
あさぼらけありあけのつきとみるまでによしののさとにふれるしらゆき朝ぼらけ有明の月と見るまでに吉野の里に降れる白雪 坂上是則
32山川やまがわに 風かぜのかけたる しがらみは
流ながれもあへえぬ 紅葉もみじなりけり▼ 現代語訳
やまがはに
かぜのかけたる
しがらみは
ながれもあへぬ
もみぢなりけり
やまかわにかぜのかけたるしがらみはながれもあえぬもみじなりけり山川に風のかけたるしがらみは流れもあへぬ紅葉なりけり 春道列樹
33久方ひさかたの 光ひかりのどけき 春はるの日ひに
しづ心こころなく 花はなの散ちるらむん▼ 現代語訳
ひさかたの
ひかりのどけき
はるのひに
しづこころなく
はなのちるらむ
ひさかたのひかりのどけきはるのひにしずこころなくはなのちるらん久方の光のどけき春の日にしづ心なく花の散るらむ 紀友則
34誰たれをかも 知しる人ひとにせむん 高砂たかさごの
松まつも昔むかしの 友ともならなくに▼ 現代語訳
たれをかも
しるひとにせむ
たかさごの
まつもむかしの
ともならなくに
たれをかもしるひとにせんたかさごのまつもむかしのともならなくに誰をかも知る人にせむ高砂の松も昔の友ならなくに 藤原興風
35人ひとはいさ 心こころも知しらず ふるさとは
花はなぞ昔むかしの 香かに匂におひいける▼ 現代語訳
ひとはいさ
こころもしらず
ふるさとは
はなぞむかしの
かににほひける
ひとはいさこころもしらずふるさとははなぞむかしのかににおいける人はいさ心も知らずふるさとは花ぞ昔の香に匂ひける 紀貫之
36夏なつの夜よは まだ宵よいながら あけぬるを
雲くものいづこに 月つきやどるらむん▼ 現代語訳
なつのよは
まだよひながら
あけぬるを
くものいづこに
つきやどるらむ
なつのよはまだよいながらあけぬるをくものいずこにつきやどるらん夏の夜はまだ宵ながらあけぬるを雲のいづこに月やどるらむ 清原深養父
37白露しらつゆに 風かぜの吹ふきしく 秋あきの野のは
つらぬきとめぬ 玉たまぞ散ちりける▼ 現代語訳
しらつゆに
かぜのふきしく
あきののは
つらぬきとめぬ
たまぞちりける
しらつゆにかぜのふきしくあきののはつらぬきとめぬたまぞちりける白露に風の吹きしく秋の野はつらぬきとめぬ玉ぞ散りける 文屋朝康
38忘わすらるる 身みをば思おもはず 誓ちかひてし
人ひとの命いのちの 惜おしくもあるかな▼ 現代語訳
わすらるる
みをばおもはず
ちかひてし
ひとのいのちの
をしくもあるかな
わすらるるみをばおもわずちかいてしひとのいのちのおしくもあるかな忘らるる身をば思はず誓ひてし人の命の惜しくもあるかな 右近
39浅茅生あさじうの 小野おのの篠原しのはら しのぶれど
あまりてなどか 人ひとの恋こいしき▼ 現代語訳
あさぢふの
をののしのはら
しのぶれど
あまりてなどか
ひとのこひしき
あさじうのおののしのはらしのぶれどあまりてなどかひとのこいしき浅茅生の小野の篠原しのぶれどあまりてなどか人の恋しき 参議等
40忍しのぶれど 色いろに出いでにけり 我わが恋こいは
物ものや思おもふと 人ひとの問とふうまで▼ 現代語訳
しのぶれど
いろにいでにけり
わがこひは
ものやおもふと
ひとのとふまで
しのぶれどいろにいでにけりわがこいはものやおもうとひとのとうまで忍ぶれど色に出でにけり我が恋は物や思ふと人の問ふまで 平兼盛
41恋こいすてふちょう 我わが名なはまだき 立たちにけり
人ひとしれずこそ 思おもひいそめしか▼ 現代語訳
こひすてふ
わがなはまだき
たちにけり
ひとしれずこそ
おもひそめしか
こいすちょうわがなはまだきたちにけりひとしれずこそおもいそめしか恋すてふ我が名はまだき立ちにけり人しれずこそ思ひそめしか 壬生忠見
42契ちぎりきな かたみに袖そでを しぼりつつ
末すえの松山まつやま 波なみこさじとは▼ 現代語訳
ちぎりきな
かたみにそでを
しぼりつつ
すゑのまつやま
なみこさじとは
ちぎりきなかたみにそでをしぼりつつすえのまつやまなみこさじとは契りきなかたみに袖をしぼりつつ末の松山波こさじとは 清原元輔
43逢あひい見みての のちの心こころに くらぶれば
昔むかしは物ものを 思おもはわざりけり▼ 現代語訳
あひみての
のちのこころに
くらぶれば
むかしはものを
おもはざりけり
あいみてののちのこころにくらぶればむかしはものをおもわざりけり逢ひ見てののちの心にくらぶれば昔は物を思はざりけり 中納言敦忠
44逢あふうことの 絶たえてしなくは なかなかに
人ひとをも身みをも 恨うらみざらまし▼ 現代語訳
あふことの
たえてしなくは
なかなかに
ひとをもみをも
うらみざらまし
あうことのたえてしなくはなかなかにひとをもみをもうらみざらまし逢ふことの絶えてしなくはなかなかに人をも身をも恨みざらまし 中納言朝忠
45あはわれとも いふうべき人は 思おもほおえで
身みのいたづずらに なりぬべきかな▼ 現代語訳
あはれとも
いふべきひとは
おもほえで
みのいたづらに
なりぬべきかな
あわれともいうべきひとはおもおえでみのいたずらになりぬべきかなあはれともいふべき人は思ほえで身のいたづらになりぬべきかな 謙徳公
46由良ゆらのとを 渡わたる舟人ふなびと かぢじを絶たえ
ゆくへも知しらぬ 恋こいの道みちかな▼ 現代語訳
ゆらのとを
わたるふなびと
かぢをたえ
ゆくへもしらぬ
こひのみちかな
ゆらのとをわたるふなびとかじをたえゆくえもしらぬこいのみちかな由良のとを渡る舟人かぢを絶えゆくへも知らぬ恋の道かな 曾禰好忠
47八重葎やえむぐら しげれる宿やどの さびしきに
人ひとこそ見みえね 秋あきは来きにけり▼ 現代語訳
やへむぐら
しげれるやどの
さびしきに
ひとこそみえね
あきはきにけり
やえむぐらしげれるやどのさびしきにひとこそみえねあきはきにけり八重葎しげれる宿のさびしきに人こそ見えね秋は来にけり 恵慶法師
48風かぜをいたみ 岩いわうつ波なみの おのれのみ
くだけて物ものを 思おもふうころかな▼ 現代語訳
かぜをいたみ
いはうつなみの
おのれのみ
くだけてものを
おもふころかな
かぜをいたみいわうつなみのおのれのみくだけてものをおもうころかな風をいたみ岩うつ波のおのれのみくだけて物を思ふころかな 源重之
49御垣守みかきもり 衛士えじのたく火ひの 夜よるはもえ
昼ひるは消きえつつ 物ものをこそ思おもへえ▼ 現代語訳
みかきもり
ゑじのたくひの
よるはもえ
ひるはきえつつ
ものをこそおもへ
みかきもりえじのたくひのよるはもえひるはきえつつものをこそおもえ御垣守衛士のたく火の夜はもえ昼は消えつつ物をこそ思へ 大中臣能宣朝臣
50君きみがため 惜おしからざりし いのちさへえ
長ながくもがなと 思おもひいけるかな▼ 現代語訳
きみがため
をしからざりし
いのちさへ
ながくもがなと
おもひけるかな
きみがためおしからざりしいのちさえながくもがなとおもいけるかな君がため惜しからざりしいのちさへ長くもがなと思ひけるかな 藤原義孝
51かくとだに えやはいぶきの さしも草ぐさ
さしも知しらじな もゆる思おもひいを▼ 現代語訳
かくとだに
えやはいぶきの
さしもぐさ
さしもしらじな
もゆるおもひを
かくとだにえやはいぶきのさしもぐささしもしらじなもゆるおもいをかくとだにえやはいぶきのさしも草さしも知らじなもゆる思ひを 藤原実方朝臣
52明けぬれば 暮くるるものとは 知くりながら
なほおうらめしき 朝あさぼらけかな▼ 現代語訳
あけぬれば
くるるものとは
しりながら
なほうらめしき
あさぼらけかな
あけぬればくるるものとはしりながらなおうらめしきあさぼらけかな明けぬれば暮るるものとは知りながらなほうらめしき朝ぼらけかな 藤原道信朝臣
53嘆なげきつつ ひとり寝ぬる夜よの 明あくる間まは
いかに久ひさしき ものとかは知しる▼ 現代語訳
なげきつつ
ひとりぬるよの
あくるまは
いかにひさしき
ものとかはしる
なげきつつひとりぬるよのあくるまはいかにひさしきものとかはしる嘆きつつひとり寝る夜の明くる間はいかに久しきものとかは知る 右大将道綱母
54忘わすれじの ゆく末すえまでは かたければ
今日きょうを限かぎりの 命いのちともがな▼ 現代語訳
わすれじの
ゆくすゑまでは
かたければ
けふをかぎりの
いのちともがな
わすれじのゆくすえまではかたければきょうをかぎりのいのちともがな忘れじのゆく末まではかたければ今日を限りの命ともがな 儀同三司母
55滝たきの音おとは たえて久ひさしく なりぬれど
名なこそ流ながれて なほお聞きこえけれ▼ 現代語訳
たきのおとは
たえてひさしく
なりぬれど
なこそながれて
なほきこえけれ
たきのおとはたえてひさしくなりぬれどなこそながれてなおきこえけれ滝の音はたえて久しくなりぬれど名こそ流れてなほ聞こえけれ 大納言公任
56あらざらむん この世よのほかの 思おもひい出でに
いまひとたびの 逢おふうこともがな▼ 現代語訳
あらざらむ
このよのほかの
おもひでに
いまひとたびの
あふこともがな
あらざらんこのよのほかのおもいいでにいまひとたびのおうこともがなあらざらむこの世のほかの思ひ出にいまひとたびの逢ふこともがな 和泉式部
57めぐり逢あひいて 見みしやそれとも わかぬ間まに
雲隠くもがくれにし 夜半よわの月つきかな▼ 現代語訳
めぐりあひて
みしやそれとも
わかぬまに
くもがくれにし
よはのつきかな
めぐりあいてみしやそれともわかぬまにくもがくれにしよわのつきかなめぐり逢ひて見しやそれともわかぬ間に雲隠れにし夜半の月かな 紫式部
58ありま山やま 猪名いなの笹原ささはら 風かぜ吹ふけば
いでそよ人ひとを 忘わすれやはする▼ 現代語訳
ありまやま
ゐなのささはら
かぜふけば
いでそよひとを
わすれやはする
ありまやまいなのささはらかぜふけばいでそよひとをわすれやはするありま山猪名の笹原風吹けばいでそよ人を忘れやはする 大弐三位
59やすらはわで 寝ねなましものを 小夜さよ更ふけて
かたぶくまでの 月つきを見みしかな▼ 現代語訳
やすらはで
ねなましものを
さよふけて
かたぶくまでの
つきをみしかな
やすらわでねなましものをさよふけてかたぶくまでのつきをみしかなやすらはで寝なましものを小夜更けてかたぶくまでの月を見しかな 赤染衛門
60大江山おおえやま いく野のの道みちの 遠とおければ
まだふみもみず 天あまの橋立はしだて▼ 現代語訳
おほえやま
いくののみちの
とほければ
まだふみもみず
あまのはしだて
おおえやまいくののみちのとおければまだふみもみずあまのはしだて大江山いく野の道の遠ければまだふみもみず天の橋立 小式部内侍
61いにしへえの 奈良ならの都みやこの 八重桜やえざくら
けふきょう九重ここのえに 匂におひいぬるかな▼ 現代語訳
いにしへの
ならのみやこの
やへざくら
けふここのへに
にほひぬるかな
いにしえのならのみやこのやえざくらきょうここのえににおいぬるかないにしへの奈良の都の八重桜けふ九重に匂ひぬるかな 伊勢大輔
62夜よをこめて 鳥とりのそらねは はかるとも
よに逢坂おうさかの 関せきは許ゆるさじ▼ 現代語訳
よをこめて
とりのそらねは
はかるとも
よにあふさかの
せきはゆるさじ
よをこめてとりのそらねははかるともよにおうさかのせきはゆるさじ夜をこめて鳥のそらねははかるともよに逢坂の関は許さじ 清少納言
63いまはただ 思おもひ絶たえなむん とばかりを
人ひとづてならで 言いふうよしもがな▼ 現代語訳
いまはただ
おもひたえなむ
とばかりを
ひとづてならで
いふよしもがな
いまはただおもいたえなんとばかりをひとづてならでいうよしもがないまはただ思ひ絶えなむとばかりを人づてならで言ふよしもがな 左京大夫道雅
64朝あさぼらけ 宇治うじの川霧かわぎり 絶たえ絶だえに
あらはわれわたる 瀬々せぜの網代木あじろぎ▼ 現代語訳
あさぼらけ
うぢのかはぎり
たえだえに
あらはれわたる
せぜのあじろぎ
あさぼらけうじのかわぎりたえだえにあらわれわたるせぜのあじろぎ朝ぼらけ宇治の川霧絶え絶えにあらはれわたる瀬々の網代木 中納言定頼
65恨うらみわび ほさぬ袖そでだに あるものを
恋こいにくちなむん 名なこそをしけれ▼ 現代語訳
うらみわび
ほさぬそでだに
あるものを
こひにくちなむ
なこそをしけれ
うらみわびほさぬそでだにあるものをこいにくちなんなこそおしけれ恨みわびほさぬ袖だにあるものを恋にくちなむ名こそをしけれ 相模
66もろともに あはわれと思おもへえ 山桜やまざくら
花はなよりほかに 知しる人ひともなし▼ 現代語訳
もろともに
あはれとおもへ
やまざくら
はなよりほかに
しるひともなし
もろともにあわれとおもえやまざくらはなよりほかにしるひともなしもろともにあはれと思へ山桜花よりほかに知る人もなし 大僧正行尊
67春はるの夜よの 夢ゆめばかりなる 手枕たまくらに
かひいなく立たたむん 名なこそをしけれ▼ 現代語訳
はるのよの
ゆめばかりなる
たまくらに
かひなくたたむ
なこそをしけれ
はるのよのゆめばかりなるたまくらにかいなくたたんなこそおしけれ春の夜の夢ばかりなる手枕にかひなく立たむ名こそをしけれ 周防内侍
68心こころにも あらで憂うき世よに ながらへえば
恋こいしかるべき 夜半よわの月つきかな▼ 現代語訳
こころにも
あらでうきよに
ながらへば
こひしかるべき
よはのつきかな
こころにもあらでうきよにながらえばこいしかるべきよわのつきかな心にもあらで憂き世にながらへば恋しかるべき夜半の月かな 三条院
69嵐あらし吹ふく 三室みむろの山やまの 紅葉もみじ葉ばは
竜田たつたの川かわの 錦にしきなりけり▼ 現代語訳
あらしふく
みむろのやまの
もみぢばは
たつたのかはの
にしきなりけり
あらしふくみむろのやまのもみじばはたつたのかわのにしきなりけり嵐吹く三室の山の紅葉葉は竜田の川の錦なりけり 能因法師
70さびしさに 宿やどを立たち出いでて ながむれば
いづずくも同おなじ 秋あきの夕ゆう暮ぐれ▼ 現代語訳
さびしさに
やどをたちいでて
ながむれば
いづくもおなじ
あきのゆふぐれ
さびしさにやどをたちいでてながむればいずこもおなじあきのゆうぐれさびしさに宿を立ち出でてながむればいづくも同じ秋の夕暮れ 良暹法師
71夕ゆうされば 門田かどたの稲葉いなば おとづずれて
蘆あしのまろやに 秋風あきかぜぞ吹ふく▼ 現代語訳
ゆふされば
かどたのいなば
おとづれて
あしのまろやに
あきかぜぞふく
ゆうさればかどたのいなばおとずれてあしのまろやにあきかぜぞふく夕されば門田の稲葉おとづれて蘆のまろやに秋風ぞ吹く 大納言経信
72音おとに聞きく 高師たかしの浜はまの あだ波なみは
かけじや袖そでの ぬれもこそすれ▼ 現代語訳
おとにきく
たかしのはまの
あだなみは
かけじやそでの
ぬれもこそすれ
おとにきくたかしのはまのあだなみはかけじやそでのぬれもこそすれ音に聞く高師の浜のあだ波はかけじや袖のぬれもこそすれ 祐子内親王家紀伊
73高砂たかさごの 尾おの上への桜さくら 咲さきにけり
外山とやまの霞かすみ 立たたずもあらなむん▼ 現代語訳
たかさごの
をのへのさくら
さきにけり
とやまのかすみ
たたずもあらなむ
たかさごのおのえのさくらさきにけりとやまのかすみたたずもあらなん高砂の尾の上の桜咲きにけり外山の霞立たずもあらなむ 権中納言匡房
74憂うかりける 人ひとを初瀬はつせの 山やまおろしよ
はげしかれとは 祈いのらぬものを▼ 現代語訳
うかりける
ひとをはつせの
やまおろしよ
はげしかれとは
いのらぬものを
うかりけるひとをはつせのやまおろしよはげしかれとはいのらぬものを憂かりける人を初瀬の山おろしよはげしかれとは祈らぬものを 源俊頼朝臣
75契ちぎりおきし させもが露つゆを いのちにて
あはわれ今年ことしの 秋あきもいぬめり▼ 現代語訳
ちぎりおきし
させもがつゆを
いのちにて
あはれことしの
あきもいぬめり
ちぎりおきしさせもがつゆをいのちにてあわれことしのあきもいぬめり契りおきしさせもが露をいのちにてあはれ今年の秋もいぬめり 藤原基俊
76わたの原はら こぎいでてみれば 久方ひさかたの
雲くも居いにまがごふう 沖おきつ白波しらなみ▼ 現代語訳
わたのはら
こぎいでてみれば
ひさかたの
くもゐにまがふ
おきつしらなみ
わたのはらこぎいでてみればひさかたのくもいにまがうおきつしらなみわたの原こぎいでてみれば久方の雲居にまがふ沖つ白波 法性寺入道前関白太政大臣
77瀬せをはやみ 岩いわにせかるる 滝川たきがわの
われても末すえに あはわむんとぞ思おもふう▼ 現代語訳
せをはやみ
いはにせかるる
たきがはの
われてもすゑに
あはむとぞおもふ
せをはやみいわにせかるるたきがわのわれてもすえにあわんとぞおもう瀬をはやみ岩にせかるる滝川のわれても末にあはむとぞ思ふ 崇徳院
78淡路島あわじしま かよふう千鳥ちどりの 鳴なく声こえに
幾夜寝覚ねざめぬ 須磨すまの関守せきもり▼ 現代語訳
あはぢしま
かよふちどりの
なくこゑに
いくよねざめぬ
すまのせきもり
あわじしまかようちどりのなくこえにいくよねざめぬすまのせきもり淡路島かよふ千鳥の鳴く声に幾夜寝覚めぬ須磨の関守 源兼昌
79秋風あきかぜに たなびく雲くもの たえ間まより
もれいづずる月つきの 影かげのさやけさ▼ 現代語訳
あきかぜに
たなびくくもの
たえまより
もれいずるつきの
かげのさやけさ
あきかぜにたなびくくものたえまよりもれいずるつきのかげのさやけさ秋風にたなびく雲のたえ間よりもれいづる月の影のさやけさ 左京大夫顕輔
80長ながからむん 心こころもしらず 黒髪くろがみの
みだれてけさは 物ものをこそ思おもへえ▼ 現代語訳
ながからむ
こころもしらず
くろかみの
みだれてけさは
ものをこそおもへ
ながからむこころもしらずくろかみのみだれてけさはものをこそおもえ長からむ心もしらず黒髪のみだれてけさは物をこそ思へ 待賢門院堀川
81ほととぎす 鳴なきつる方かた を ながむれば
ただありあけの 月つきぞ残のこれる▼ 現代語訳
ほととぎす
なきつるかたを
ながむれば
ただありあけの
つきぞのこれる
ほととぎすなきつるかたをながむればただありあけのつきぞのこれるほととぎす鳴きつる方をながむればただありあけの月ぞ残れる 後徳大寺左大臣
82思おもひいわび さても命いのちは あるものを
憂うきにたへえぬは 涙なみだなりけり▼ 現代語訳
おもひわび
さてもいのちは
あるものを
うきにたへぬは
なみだなりけり
おもいわびさてもいのちはあるものをうきにたえぬはなみだなりけり思ひわびさても命はあるものを憂きにたへぬは涙なりけり 道因法師
83世よの中なかよ 道みちこそなけれ 思おもひい入いる
山やまの奥おくにも 鹿しかぞ鳴なくなる▼ 現代語訳
よのなかよ
みちこそなけれ
おもひいる
やまのおくにも
しかぞなくなる
よのなかよみちこそなけれおもいいるやまのおくにもしかぞなくなる世の中よ道こそなけれ思ひ入る山の奥にも鹿ぞ鳴くなる 皇太后宮大夫俊成
84長ながらへえば またこのごろや しのばれむん
憂うしと見みし世よぞ 今いまは恋こいしき▼ 現代語訳
ながらへば
またこのごろや
しのばれむ
うしとみしよぞ
いまはこひしき
ながらえばまたこのごろやしのばれんうしとみしよぞいまはこいしき長らへばまたこのごろやしのばれむ憂しと見し世ぞ今は恋しき 藤原清輔朝臣
85夜よもすがら 物もの思おもふうころは 明あけやらで
閨ねやのひまさへえ つれなかりけり▼ 現代語訳
よもすがら
ものおもふころは
あけやらで
ねやのひまさへ
つれなかりけり
よもすがらものおもうころはあけやらでねやのひまさえつれなかりけり夜もすがら物思ふころは明けやらで閨のひまさへつれなかりけり 俊恵法師
86嘆なげけとて 月つきやは物ものを 思おもはわする
かこち顔がおなる わが涙なみだかな▼ 現代語訳
なげけとて
つきやはものを
おもはする
かこちがほなる
わがなみだかな
なげけとてつきやはものをおもわするかこちがおなるわがなみだかな嘆けとて月やは物を思はするかこち顔なるわが涙かな 西行法師
87村雨むらさめの 露つゆもまだひぬ まきの葉はに
霧きりたちのぼる 秋あきの夕ゆう暮ぐれ▼ 現代語訳
むらさめの
つゆもまだひぬ
まきのはに
きりたちのぼる
あきのゆふぐれ
むらさめのつゆもまだひぬまきのはにきりたちのぼるあきのゆうぐれ村雨の露もまだひぬまきの葉に霧たちのぼる秋の夕暮れ 寂蓮法師
88難波江なにわえの 葦あしのかりねの ひとよゆゑえ
みをつくしてや 恋こひいわたるべき▼ 現代語訳
なにはえの
あしのかりねの
ひとよゆゑ
みをつくしてや
こひわたるべき
なにわえのあしのかりねのひとよゆえみをつくしてやこいわたるべき難波江の葦のかりねのひとよゆゑみをつくしてや恋ひわたるべき 皇嘉門院別当
89玉たまの緒およ 絶たえなば絶たえね ながらへえば
忍しのぶることの 弱よわりもぞする▼ 現代語訳
たまのをよ
たえなばたえね
ながらへば
しのぶることの
よわりもぞする
たまのおよたえなばたえねながらえばしのぶることのよわりもぞする玉の緒よ絶えなば絶えねながらへば忍ぶることの弱りもぞする 式子内親王
90見みせばやな 雄島おじまのあまの 袖そでだにも
ぬれにぞぬれし 色いろはかはわらず▼ 現代語訳
みせばやな
をじまのあまの
そでだにも
ぬれにぞぬれし
いろはかはらず
みせばやなおじまのあまのそでだにもぬれにぞぬれしいろはかわらず見せばやな雄島のあまの袖だにもぬれにぞぬれし色はかはらず 殷富門院大輔
91きりぎりす 鳴なくや霜夜しもよの さむしろに
衣ころもかたしき ひとりかも寝ねむん▼ 現代語訳
きりぎりす
なくやしもよの
さむしろに
ころもかたしき
ひとりかもねむ
きりぎりすなくやしもよのさむしろにころもかたしきひとりかもねむきりぎりす鳴くや霜夜のさむしろに衣かたしきひとりかも寝む 後京極摂政前太政大臣
92わが袖そでは 潮干しおひに見みえぬ 沖おきの石いしの
人ひとこそ知しらね かわくまもなし▼ 現代語訳
わがそでは
しほひにみえぬ
おきのいしの
ひとこそしらね
かわくまもなし
わがそではしおひにみえぬおきのいしのひとこそしらねかわくまもなしわが袖は潮干に見えぬ沖の石の人こそ知らねかわくまもなし 二条院讃岐
93世よの中なかは つねにもがもな 渚なぎさこぐ
あまの小舟こぶねの 綱手つなでかなしも▼ 現代語訳
よのなかは
つねにもがもな
なぎさこぐ
あまのをぶねの
つなでかなしも
よのなかはつねにもがもななぎさこぐあまのおぶねのつなでかなしも世の中はつねにもがもな渚こぐあまの小舟の綱手かなしも 鎌倉右大臣
94み吉野よしのの 山やまの秋風あきかぜ さ夜よふけて
ふるさと寒さむく 衣ころもうつなり▼ 現代語訳
みよしのの
やまのあきかぜ
さよふけて
ふるさとさむく
ころもうつなり
みよしののやまのあきかぜさよふけてふるさとさむくころもうつなりみ吉野の山の秋風さ夜ふけてふるさと寒く衣うつなり 参議雅経
95おほおけなく 憂うき世よの民たみに おほおふうかな
わがたつ杣そまに 墨染すみぞめの袖そで▼ 現代語訳
おほけなく
うきよのたみに
おほふかな
わがたつそまに
すみぞめのそで
おおけなくうきよのたみにおおうかなわがたつそまにすみぞめのそでおほけなく憂き世の民におほふかなわがたつ杣に墨染の袖 前大僧正慈円
96花はなさそふう 嵐あらしの庭にわの 雪ゆきならで
ふりゆくものは わが身みなりけり▼ 現代語訳
はなさそふ
あらしのにはの
ゆきならで
ふりゆくものは
わがみなりけり
はなさそうあらしのにわのゆきならでふりゆくものはわがみなりけり花さそふ嵐の庭の雪ならでふりゆくものはわが身なりけり 入道前太政大臣
97来こぬ人ひとを 松帆まつほの浦うらの 夕ゆうなぎに
焼やくやもしほの 身みもこがれつつ▼ 現代語訳
こぬひとを
まつほのうらの
ゆうなぎに
やくやもしほの
みもこがれつつ
こぬひとをまつほのうらのゆうなぎにやくやもしおのみもこがれつつ来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くやもしほの身もこがれつつ 権中納言定家
98風かぜそよぐ ならの小川おがわの 夕暮ぐれは
みそぎぞ夏なつの しるしなりける▼ 現代語訳
かぜそよぐ
ならのをがはの
ゆふぐれは
みそぎぞなつの
しるしなりける
かぜそよぐならのおがわのゆうぐれはみそぎぞなつのしるしなりける風そよぐならの小川の夕暮はみそぎぞ夏のしるしなりける 従二位家隆
99人ひともをし 人ひともうらめし あぢじきなく
世よを思おもふうゆゑえに 物も思おもふう身みは▼ 現代語訳
ひともをし
ひともうらめし
あぢきなく
よをおもふゆゑに
ものおもふみは
ひともおしひともうらめしあじきなくよをおもうゆえにものおもうみは人もをし人もうらめしあぢきなく世を思ふゆゑに物思ふ身は 後鳥羽院
100ももしきや ふるき軒のきばの しのぶにも
なほおあまりある 昔むかしなりけり▼ 現代語訳
ももしきや
ふるきのきばの
しのぶにも
なほあまりある
むかしなりけり
ももしきやふるきのきばのしのぶにもなおあまりあるむかしなりけりももしきやふるき軒ばのしのぶにもなほあまりある昔なりけり 順徳院