時雨の百人一首

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Translated by WILLIAM N. PORTER
English Audio:LibriVox

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曾禰好忠そねのよしただ

由良ゆらのとを
渡わたる舟人ふなびと
かぢじを絶たえ
ゆくへも知しらぬ
恋こいの道みちかな

曾禰好忠

ゆくへもし
らぬこひの
みちかな

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ゆら

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46番歌
由良ゆらのとを 渡わたる舟人ふなびと かぢじを絶たえ
ゆくへも知しらぬ 恋こいの道みちかな
作者:曾禰好忠そねのよしただ(生没年不詳)
出典:新古今和歌集 恋
現代語訳
由良の河口を渡る船人が、櫂をなくして漂うように行方の知れない恋路であることよ。
解説
この歌は、流れの速い河口で舵を失くした船乗りのように、恋路に迷い困り果てた心境を詠んだものです。
どんな人?
曾禰好忠は、万葉集で用いられる古語を積極的に取り入れ、和歌の表現の幅を広げようとしたり、百首単位で詠む百首歌を始めたりした先駆者でした。しかしながら、その斬新な作風は当時の貴族たちからは理解されず、むしろ異端と見なされました。しかし、後に彼の歌は高く評価され、『詞花和歌集』ではもっとも多く採られています。彼は丹後掾として丹後に赴いていたため、由良川は慣れ親しんだ風景だったと考えられます。由良川は京都府舞鶴市、宮津市を流れる川で日本海に注ぎます。
品詞分解と文法
歌のイメージ
曾禰好忠の歌のイメージ

この画像は、William N. Porter氏が1909年にイギリスで出版した百人一首の英訳本『A Hundred Verses from Old Japan』の挿絵を元にAdobe Firefly(生成AI)で色を付けて、アレンジしたイメージです。

曾禰好忠の略年表
不明
丹後掾となる
985年
円融上皇の子の日の御遊に招かれずに参加し、追い出される
備考

曾禰好忠は歌人としての実力があったものの、身分が低く、当時の貴族社会から排斥された人物でした。

  • 丹後掾を務めていたことから「曽丹後」「曽丹」と呼ばれたが、蔑んだ呼び名であったといわれる
  • 中古三十六歌仙の一人に数えられる
付録
小野小町の梶を失くした舟に
見立てた歌
小野小町も曾禰好忠と同じく、漠然とした不安を梶を失くした舟に見立てて歌を詠んでいます。

原文

須磨すまの海女あまの 浦うらこぐ舟ふねの 梶かじを絶たえ
よるべなき身みぞ 悲かなしかりける 『続古今和歌集』小野小町

現代語訳

須磨の浦で舟を漕ぐ海女が梶を失ったように、寄る辺もない我が身の悲しさであることよ。

行方知らずの心境を詠んだ西行の歌
西行も曾禰好忠と同じように行方知らずの心境を詠んでいます。
『新古今和歌集』の詞書には「東の方へ修行し侍りけるに、富士の山を詠める」とあります。どこへ向かうかわからない富士の煙に、自分の行方も定めぬ放浪の旅を重ね合わせているようです。

原文

風かぜになびく 富士ふじの煙けぶりの 空そらに消きえて
ゆくへもしらぬ わが思おもひかな 『新古今和歌集』西行

現代語訳

風になびく富士山の噴煙が空に消えるように、
私の思いもこの先どこにたどり着くのかわからない。

過ぎゆく秋を惜しんだ歌
「きりぎりす」は今の「こおろぎ」のことです。
晩秋に鳴くこおろぎの鳴き声に残り少ない秋を名残惜しんでいます。
こおろぎ

原文

鳴なけや鳴なけ 蓬よもぎが杣そまの きりぎりす
過すぎゆく秋あきは げにぞ悲かなしき 『後拾遺和歌集』曾禰好忠

現代語訳

鳴けよ鳴け。蓬を杣にしているこおろぎよ。
過ぎゆく秋はまったく悲しいものだ。

由良川(京都府)
由良川(京都府)

京都府北部を流れる一級水系の本流。
京都丹後鉄道が日本海をバックに由良川を渡ります。地図へのリンク