歌人に会える百人一首
伊勢大輔
意味
古都奈良で咲き誇っていた八重桜が、今日は平安京の宮中で美しく咲き誇っていますよ。
解説
この歌は、奈良・興福寺の八重桜が宮中へ献上された際に詠まれたものです。伊勢大輔は突然和歌を求められるという難しい場面に立たされましたが、「いにしへ(昔の奈良)」と「けふ(今日の平安京)」、「八重桜」と「九重(宮中)」という美しい対比を用い、桜の移りゆく姿に天皇の御代の繁栄を重ねて詠み上げました。華やかな情景と祝賀の気持ちを見事に表現した、宮廷らしい優雅な歌です。
この逸話からは、伊勢大輔が単なる歌人ではなく、機転と知性に優れた女性だったことがうかがえます。突然の命令にも動じず、その場で格調高い歌を作り上げた才能は宮中の人々を驚かせ、『袋草子』には「万人感嘆、宮中鼓動す」と伝えられました。和泉式部や紫式部と交流した才女として知られる彼女は、優れた教養と豊かな感性を兼ね備えた、平安時代を代表する女性歌人の一人でした。
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