歌人に会える百人一首
祐子内親王家紀伊
意味
噂に聞くいたずらに立ち騒ぐ高師の浜の波にはかかりますまい。袖を濡らすことになるでしょうから。
解説
この歌は、男性が恋文を送り女性がそれに返歌する趣向の歌合「堀河院艶書合」で詠まれた一首です。当時二十九歳だった気鋭の貴族・藤原俊忠からの熱烈な求愛に対し、当時七十歳を過ぎていた紀伊が返したもので、「噂に高い高師の浜の、いたずらに立ち騒ぐ波(浮気なあなたの誘い)などには乗るまい。後で涙で袖を濡らすのは目に見えているから」と詠んでいます。艶やかな恋の駆け引きを、鮮やかなユーモアと比喩で切り返した名作です。
作者である祐子内親王家紀伊は、長年にわたり宮廷サロンで活躍したベテランの女房歌人です。若い男性からの熱烈なアプローチに対し、年齢差を感じさせない若々しさと、大人の余裕でいなしてみせる「粋で聡明な姉御肌」の人柄が魅力的です。夫の官職にちなんで紀伊と呼ばれた彼女は、恋のゲームを誰よりも楽しみ、熟練の言葉のセンスで若者をあっと言わせる、お茶目で知性あふれる女性だったようです。
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