歌人に会える百人一首
源俊頼朝臣
意味
つれないあの人が私になびくように初瀬の観音様に祈りこそしましたが、初瀬の山おろしよ。お前のように冷たく手厳しくあれとは祈ってもいないのに。
解説
この歌は、藤原俊忠の邸宅で催された歌会にて、「祈れども逢わざる恋」というお題で詠まれた一首です。冷淡な恋人が振り向いてくれるよう、観音信仰で有名な長谷寺に必死で祈願したものの、恋の成就どころか「初瀬の山から吹き下ろす激しい冬の嵐(山おろし)」のように、ますます冷たくあしらわれてしまう切なさを詠んでいます。「山おろしよ、お前のように冷酷になれとは祈っていないのに」と、自然の猛威に八つ当たりするような絶妙なユーモアが光ります。
作者である源俊頼は、平安時代後期の歌壇をリードした、非常にチャレンジ精神旺盛で革新的な歌人です。伝統を重んじる保守派と激しく対立しながらも、これまでにない新しい表現や型破りな感性を次々と取り入れ、白河院から勅撰和歌集の撰者に大抜擢されるほどの実力を持っていました。身分こそ低かったものの、常識に囚われない自由な発想力と、独自のスタイルを貫き通す情熱あふれる硬骨漢だった彼の人柄が、このドラマチックで一風変わった恋の歌にもよく表れています。
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