百人一首解説

【百人一首 75番】契りおきし…歌の現代語訳と解説!藤原基俊はどんな人物なのか

契りおきしさせもが露を命にて

あはれことしの秋もいぬめり

【読み】

ちぎりおきしさせもがつゆをいのちにて

あはれことしのあきもいぬめり

【75番】契りおきし~ 現代語訳と解説!

【現代語訳】

「まかせておけ」と、あれほど堅く約束してくださった、あのときの甘露のようなお言葉を、命の綱と頼んで待っておりましたのに、悲しや、今年の秋もまた過ぎて行ってしまいそうです。

【解説】

作者の藤原基俊の息子は、奈良興福寺の光覚という僧でした。

興福寺では10月10日から16日まで維摩経を教える維摩講が行われますが、この名誉ある講師に光覚を、と前の太政大臣・藤原忠通にたびたび頼んでいました。

忠通からは「大丈夫だ、私に任せておけ」という約束を取り付けたにも関わらず、その年も息子・光覚は講師に選ばれませんでした。

それに対して、恨みをこめた藤原基俊は「約束したのに、ああ、今年の秋も過ぎていくのか」と歌を通して嘆いてみせたのです。

藤原基俊とは、どんな人物??

和歌や漢詩の才能に優れ、名家の出身でしたが、才能を鼻にかけるくせがあったようで、位は従五位上・左衛門佐に止まっています。

源俊頼のライバルで保守派歌人の代表的存在でした。藤原定家の父藤原俊成が入門しています。

まとめ!

上の句 契りおきしさせもが露を命にて
下の句 あはれことしの秋もいぬめり
歌人 藤原基俊(1060~1142)
決まり字 ちぎりお
決まり字数 4
収載和歌集 千載和歌集
百人一首で歌われている歌というのは、美しい自然を歌い上げているものばかりと思いきや、人に対する恨み節、約束が成就されなかった嘆きなども歌われたりするところが、なんだか人間臭くて親しみが湧いてくる。

今も昔も変わらず、いつの時代でも親ばかはあるものなんだね。