世の中は常にもがもな渚こぐ
海士の小舟の綱手かなしも
【読み】
よのなかはつねにもがもななぎさこぐ
あまのをぶねのつなでかなしも
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【93番】世の中は~ 現代語訳と解説!
【現代語訳】
世は常に変わらないものであってほしいものだなぁ。渚を漕いでいく、漁師が小舟の綱手を引くのが愛しくもあり哀しくもあります。
【解説】
『無常だが穏やかなこの世がずっと続けば良いのに、、、。』という想いを込めた歌。
「日常的な漁師の小舟を引く様子」も取り込むことで、平凡かつ平和な世の継続をより一層祈る様子が表れています。
しかしながら、作者の「鎌倉右大臣」はこの歌を詠んだのちに、甥の「公暁(くぎょう)」に暗殺されるという最期を迎えます。
この『動乱の未来』を彼の本能で見据え詠ったのかもしれませんね。
鎌倉右大臣とは、どんな人物??
鎌倉幕府初代将軍である源頼朝の次男にして、同幕府の第三代将軍です。
父の死後、始めは兄の頼家が将軍職を引き継ぎました。
しかし頼家の独断的な政治は御家人たちの反発を招いたため、彼は追放され、弟である実朝がその職を継ぎました。
しかし、このころの幕府を取り巻く環境は、権力争いと怨讐の中で混乱を極めており、最終的に実朝は頼家の息子によって暗殺されました。
実朝には子供がいなかったため、ここで将軍家の血筋は途絶えました。
まとめ!
上の句 | 世の中は常にもがもな渚こぐ |
---|---|
下の句 | 海士の小舟の綱手かなしも |
歌人 | 鎌倉右大臣(1192~1219年) |
決まり字 | よのなかは |
決まり字数 | 5 |
収載和歌集 | 新勅撰和歌集 |
「世の中はいつの時代も嗚呼、無常なり!」
祈った平和な世界とは真逆の最期を辿ってしまった作者。彼の人生を象徴するような歌となりました。
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