歌人に会える百人一首
大納言経信
意味
夕方になると、門前の稲の葉は音を立て、ついでに葦葺きのこの庵にも秋風が吹きつけることだ。
解説
この歌は、親戚である源師賢の梅津の別荘で催された歌会にて、「田家の秋風」というお題で詠まれた一首です。当時、貴族の間では田舎の素朴な情景を愛する田園趣味が流行していました。夕暮れ時に門前の稲の葉がカサカサと音を立て、その風がそのまま自分の葦葺きの庵にも吹きつけてくるという、田舎暮らしの風情や秋の訪れの寂しさを、聴覚と視覚を刺激するリアルな描写で鮮やかに表現しています。
作者である源経信は、宇多源氏の血を引く高貴な生まれでありながら、和歌・漢詩・管弦のすべてに超一流の才能を持つ博識多芸な人物でした。白河院の舟遊びに遅刻した際、「どの舟にも乗ることができます」と言い放ち、どのジャンルでも無双してみせたという、自分の才能への絶対的な自信と、お茶目で大胆な不敵さを持っています。藤原公任の「三舟の才」の逸話にあやかって、和歌・漢詩・管弦の三つの舟を渡り歩いた、華やかで自信に満ちた文化人でした。
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