歌人に会える百人一首
前大僧正行尊
意味
お互いにしみじみと愛しく思っておくれ山桜よ。心を通い合わせられる相手は他にいないのだから。
解説
この歌は、吉野から熊野へと続く大峰山中で詠まれたとされる一首です。人里離れた深山に咲く山桜に向かい、「私のほかに誰があなたを訪ねてくるだろうか」と語りかけるように詠まれています。厳しい自然の中でひっそりと咲く山桜への親しみと感動が表現されており、山中の静寂や春の趣がしみじみと伝わってきます。自然と心を通わせるような繊細なまなざしが印象的な名歌です。
作者の行尊は、平安時代後期の天台宗の僧で、後に大僧正にまで昇った高僧です。和歌にも優れ、多くの歌を後世に残しました。修験の地として知られる大峰山を訪れたことでも知られ、その経験は歌にも反映されています。この歌には、深山の自然を慈しみ、その美しさを素直に味わう行尊の豊かな感受性がよく表れています。
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