歌人に会える百人一首
西行法師
意味
嘆けと言って月が私に物思いをさせるのだろうか。そうではない。月に誘われるそぶりで流れる私の涙かな。
解説
この歌は、「月前の恋」というお題で詠まれた一首です。恋人を思うあまり流れる涙を、まるで月が物思いをさせたせいであるかのように語り、胸の内の悲しみを直接は明かさずに表現しています。月に誘われるようにこぼれる涙には、恋の切なさを人知れず抱え込む繊細な心がにじんでいます。
作者である西行法師は、武士の身分や家庭を捨てて出家し、生涯を通じて旅と歌に生きた歌人です。自然の風景に自身の心を重ねて詠むことを得意とし、この歌にも月を借りて恋の苦しみを語る西行らしい情趣が表れています。人の世への執着を離れながらも、恋や悲しみへの深い共感を失わなかった人物でした。
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