心にもあらでうき世にながらへば
恋しかるべき夜半の月かな
【読み】
こころにもあらでうきよながらへば
こいしかるべきよはのつきかな
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【68番】心にも~ 現代語訳と解説!
【現代語訳】
この憂き世に生き長らえるのは本意ではないが、もしそういうことになったら、今夜ここで眺めた真夜中の月が、さぞ恋しく思いだされることであろうよ。
【解説】
この歌には、複雑な背景があります。
権力の絶頂期にいた藤原道長に目を患ったことを理由に退位を迫られていました。
先帝一条天皇と道長の娘との間にできた子供を次の天皇に即位させ、道長が摂政として政治権力を一手に握りたかったからです。
そんな時に詠んだ歌で、本当は死んでしまいたいくらいだけど、心ならずも生きながらえてしまったなら、今夜宮中から眺めているこの夜ふけの月が、きっとさぞかし懐かしく思い出されてくることだろうという辛い心情を詠みました。
三条院とは、どんな人物??
冷泉天皇の第2皇子、居貞親王。
986年に皇太子となり、25年も天皇の位を待ち、1011年に即位しましたが、病弱で在位6年で次の天皇に位を譲り、翌年に死去しました。
在位中に2回も内裏が火事になったり、藤原道長前帝の一条院と娘の彰子との間にできた皇子を即位させるために退位をせまったり、その生涯は苦難の連続でした。
まとめ!
上の句 | 心にもあらでうき世にながらへば |
---|---|
下の句 | 恋しかるべき夜半の月かな |
歌人 | 三条院(976~1017) |
決まり字 | こころに |
決まり字数 | 4 |
収載和歌集 | 後拾遺和歌集 |
恋の苦しい心情を詠む人もいれば、自然の美しさを切り取って表現する人もいる中で、権力争いに敗れて死んでしまいたいほどの切なさを謳う人もいる。
ただ単に心情をクタクタ述べるより、選び抜かれた31文字に凝縮された人の心は、今も昔も時代を超えて人の心に突き刺さってくるものだね。
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