百人一首解説

【百人一首 73番】高砂の…歌の現代語訳と解説!前権中納言匡房はどんな人物なのか

高砂の尾上のさくら咲きにけり

外山のかすみ立たずもあらなむ

【読み】

たかさごのおのへのさくらさきにけり

とやまのかすみたたずもあらなむ

【73番】高砂の~ 現代語訳と解説!

【現代語訳】

奥山の峰にもいよいよ桜が咲いたな。端山に霞がたたないでいてほしいものだ。

【解説】

作者の大江匡房は、学者一族として有名な大江家に生まれた平安時代を代表する博識な人です。しかし、この一首は技巧をあまりこらさずに詠まれています。

お酒の席でほどよく酔いが回って来たところで遠い高山の山頂を望み、頂きに咲く桜を眺めている。

あんなに美しい桜が山の頂に咲いているのだから、里山から春の霞がたたないでほしいと、感じたままに「遙か遠くの美しい桜を眺める」幸福を素直に詠んでいます。

前権中納言匡房とは、どんな人物??

本名は大江匡房で、大江匡衡(まさひら)と赤染衛門夫婦のひ孫です。

平安時代を代表する学識者で、幼い頃から神童の呼び声高く、菅原道真と比較されました。

16歳で文章生となり、後冷泉・後三条天皇・白川・堀川四代の天皇に仕え権中納言まで出世しました。

和歌や漢詩で名を挙げたほか、軍学・有職をも極めた当代の碩学として知られています。

まとめ!

上の句 高砂の尾上のさくら咲きにけり
下の句 外山のかすみ立たずもあらなむ
歌人 前権中納言匡房(1041~1111)
決まり字 たか
決まり字数 2
収載和歌集 後拾遺和歌集
お酒を飲む席で、「遙かに山桜を望む」という題を与えられて咄嗟に歌が詠めることじたい超人技にしか思えない。

ふだんから、視覚や聴覚、嗅覚などの五感を通して感じる歌の種にアンテナを張り続けていたんだろうな、と思う。

現代人は情報にしろ、物にしろ、周りには色々なものがありすぎて、五感を最大限に生かせていないのかもしれないな。

足元の花や、空の星にもっと関心を持つようにしよっと。