おほけなくうき世の民におほふかな
わが立つ杣に墨染めの袖
【読み】
おほ(お)けなくうきよのたみにおほ(お)ふ(う)かな
わがたつそまにすみぞめのそで
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【95番】おほけなく~ 現代語訳と解説!
【現代語訳】
身の程に過ぎたことではありますが、比叡山に住み始めた私の墨染めの袖を、辛き世の人々に覆いかけるように救いたいのです。
【解説】
作者の慈円が仏の道に進んだ若かりし頃に詠った歌とされます。
「おほけなく」は「身分不相応ですが」という意で、「墨染め」は自身の衣の「墨染めの黒」と比叡山に入ったばかりの「山へ住み初め」が掛詞になっています。
慈円の謙虚かつ「民をなんとか救いたい」という強い意志が表れている歌ですね。
前大僧正慈円とは、どんな人物??
平安時代末期から鎌倉時代初期の天台宗の僧です。
38歳で全宗徒を統括する座主になり、またその後4度もこの役職に就任しました。
慈円は自分の生きた凄惨な時代を、愚管抄という歴史書に記しました。
その中には権力が貴族から武士に移る様子が、僧としての目を通じて描かれているそうです。
その経験もあり、彼は承久の乱のために挙兵しようとする後鳥羽上皇に反対したそうです。
まとめ!
上の句 | おほけなくうき世の民におほふかな |
---|---|
下の句 | わが立つ杣に墨染めの袖 |
歌人 | 前大僧正慈円(1155~1225年) |
決まり字 | おほけ |
決まり字数 | 3 |
収載和歌集 | 千載和歌集 |
「杣」は「比叡山」を指します。
この頃、戦や飢饉、疫病など国民にとって乱れた時代であったそうで、入山した慈円の「救済」を祈る想いがひしひしと感じられます。
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